解説:コミュニケーションにおける誤解の原因と対処方法

(本記事は、図解 Advent Calendar 2020 12/16のために執筆しました)

ミス・コミュニケーションはどのように発生するか
( 岡本真一郎、愛知学院大学心身科学部心理学科)
ストラクチャードコミュニケーションは、コミュニケーションにおける誤解を速く発見し、その場で解消することで、確実な相互理解を図ることを目的にしています。

なぜ、ストラクチャードコミュニケーションが誤解の発見に有効なのかを解説します。

右のグラフは、コミュニケーションにおける誤解を原因別に分類したものです。大学生を対象に過去に経験した誤解の事例を自由記述で回収し、誤解の原因別に分類しました。
(詳細は、「ミス・コミュニケーションはどのように発生するか-誤解の経験に関する調査-」を参照ください)

主な誤解の原因の三つと、それ対する対処方法を以下の表にまとめました。

誤解の原因 誤解の内容 対処方法
①音の聞き間違い
  • 特に人名の聞き間違いが多いです。
    (例えば、MatsuoをMasuoに、TajimaをKajimaに子音を聞き間違う場合、また、Hisadaを、IshidaやHishidaに間違えるという、母音を聞き間違う場合です)
  • 話し手は正しく伝えた、聴き手も正しく聞いたと、双方に正しいと認識しており、通常は誤解が発見されません。
  • 聴き手が聞いた内容を書いて話し手に見せることで、確認する対処方法が有効です。(オウム返しで発音する対処方法もあります。しかし、聴いた内容を全てオウム返しする事は非現実的です)
②指示対象の違い
  • 指示語の対象となるモノを取り違えです。
    (例えば、「それ」「あれ」のような代名詞の取り違えが多いです。また、「いつもの所」「例のこと」のような常套句が指示するものの取り違えもあります)
  • 指示語は、誤解を生みやすい「言葉」です。
  • 話し手も聴き手も双方ともに、指示語が出たら注意し、その場で言い換えを行い確認します。
③解釈の違い
  • 言葉の意味を取り違えて理解する。
    (話し手の意図が聴き手に正しく伝わらない。同じ単語なのに異なる意味と捉えた(方言も同様)。数量の程度を異なる大きさで捉えたなどです)
  • 解釈の違いも、双方に正しいと認識しているので、通常は誤解が発見されません。
  • 聞いた内容を箇条書きで書いて示しても、文字の上は同じなので、誤解を発見できません。文字の裏にある意味を表現しなければ、誤解を発見することができません。
  • 聴き手が聞いた内容を、聴き手の理解を描いて話し手に見せることで確認する対処方法が有効です。この時、聴き手の理解で情報を分類し、図解を用いて表現することで、誤解が発見しやすくなります。

ストラクチャードコミュニケーションは、対処方法の①「書いて話し手に見せる」や③「聴き手の理解を描いて話し手に見せる」を、実践します。これにより、「話し手は正しく伝えた、聴き手も正しく聞いたと、双方に正しいと認識しているコミュニケーション」において、誤解を発見することができる訳です。

具体的なストラクチャードコミュニケーションの技法について詳しく知りたい方は、「実践の型(Style)」を参照ください。