大谷選手に日本ハム入団を決心させたプレゼン資料「大谷翔平君へ 夢への道しるべ」が話題となっているそうです。
(出典:
http://www.fighters.co.jp/news/detail/3251.html)
ビジネスプレゼン資料に慣れておいでの方からしたら、ビジュアル面では改善の余地はありますが、論理展開という面では大谷選手に日本ハム入団を決心させたのも頷ける内容でしっかりと構成されています。
以下、プレゼン資料の各ページを、ストラクチャードコミュニケーションの10個の基本構造のどれで表現されているかを解析し、併せて、各ページのキーメッセージと全体の論理展開について解説しました。プレゼン資料と合わせてご覧ください。
ページ |
プレゼン資料 |
構造と解説 |
1 |
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- 「大谷翔平君へ 夢への道しるべ」と題した資料。
- 最近は、幾つもの競技で若者が海外進出をし夢を実現する中、高校卒業後大リーグでプレーしたいと語っていた大谷選手に対して、若年期に海外進出することへの現状や、日本球界で実績を作ることの意味を伝えている。
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2 |
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3 |
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比較
- NPBとMLBを比較案として、大谷選手の希望を比較項目にして、比較する構造。
- キーメッセージは、双方に大きな差が無いことを示し、大谷選手にNPBの選択肢もあることを促す。
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4 |
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配置、対比、階層
- 現在地(左下青丸)と、MLBトップ(右上赤丸)とを、2軸(縦軸:競技力の差、横軸:競技環境・生活環境の差)で配置する構造。
- また、縦軸にはNPBの選手層と、MLBの選手層との、階層も示し、かつ対比する構造。
- このスライドは、現在地からMLBトップに行くには、初め横に行ってから次に縦に行く(MLB挑戦)手段と、初め縦に行ってから次に横に行く(日本ハム入団)手段の2通りがあることを示す。そして縦に行く場合の、NPBとMLBの違い対比させている。
- キーメッセージは、NPB(日本ハム)からMLBを目指す選択肢もあることを促す。前ページは、大谷選手の視点での比較であったが、本ページは、一般論としての比較となる。
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5 |
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並列
- キーメッセージは、日本からMLBを目指した選手の47名中、MLB実績が◎の選手が9名。またNPBの実勢の無い選手が5名いると言う事実を伝える。
- 次へスライドへの前提の通知。
- ※別紙として具体的にデータを示すことで、信憑性を確保している。
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6 |
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並列
- キーメッセージは、3点。スライドの通り。
- ※別紙として具体的にデータを示すことで、信憑性を確保している。
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7 |
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配置
- 表形式のため比較のように見えるが、主旨は韓国野球界で高校卒業後MLBに進出した選手で活躍している状況を示す構造。
- キーメッセージは、1994-2004年の11年間、28名中、4名が高卒メジャー選手であること。
- ただ、このスライドだけでは、キーメッセージが分りづらい。5-6ページの様な形式にした方が良い。
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8 |
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並列
- 表形式のため比較のように見えるが、主旨は高卒メジャー4選手の特徴を示す構造。
- キーメッセージは、高卒メジャー4選手の特徴2点。1点目は、メジャーデビューは全員5、6年目、2点目は、約20年間で高卒成功者は野手のみ。前ページ同様、キーメッセージが、分かりづらい。
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9 |
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並列
- キーメッセージは、4点。スライドの通り。
- そして、結論として、『日本野球での高い実績が、「MLBトップの実力」「長期活躍」に影響していると言える』と、先ずはNPBで実績を残すことを主張する。
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10 |
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並列
- キーメッセージは、直接MLBを目指す場合の、能力以外の要件を幾つも列挙し、野球以外で気を使わなければならない状況を伝える構造。
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11 |
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比較
- 国内実績の有無で、MLB活躍の比率を比較する構造。
- キーメッセージは、国内実績を積んでからMLBに挑戦する方が良いとの主張のダメ押し。
- ただ、幾つかの数字について、整合性や妥当性について懸念があります。例えば、表内の日本の%欄の39.7%と、下部計算式の69.0%の違い。表内の%列の解説の「挑戦者全員」と「MLB挑戦者」の合計数の関係。下部計算式のMLB活躍29名は、国内実績あり42名を完全に包含した数かなど、気になります。
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12 |
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配置
- 競技ごとに2軸(縦軸:競技力の差、横軸:競技環境・生活環境の差)で配置する構造。
- ここからは野球以外の競技では、若いうちから海外に出て活躍するケースがあるとの反論に対応するもの。
- このスライドの2軸は、4ページ目でも使用されている。2軸で種々の競技を配置し、野球は世界と日本の行儀特の差は無く、日本の競技環境と遜色ないことを示している。
- キーメッセージは、NPB(日本ハム)で選手として確立されてから海外に拠点を置く(勝負する)のが良いことを示す。
- 4ページと12ページとの間に、野球の競技環境に関する見解に違いが見てとれる。また、競技の配置場所と、海外進出傾向に関連が見てとれない。その意味で、2軸を再考する方が良いと感じる。
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13 |
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並列
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14 |
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並列
- 3つの海外進出傾向に対し以降比較するための、比較項目を5つ示す構造。
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15 |
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比較
- 「国内に拠点を置く競技(黄)」を、5つの評価項目で比較する構造。
- キーメッセージは、日本国内が競技力、競技環境共に優れている。
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16 |
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比較
- 「若年層から海外に拠点を置く競技(赤)」を、5つの評価項目で比較する構造。
- キーメッセージは、海外拠点が競技力、競技環境共に優れている。
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17 |
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比較
- 「選手として確立されてから海外に拠点を置く競技(青)」で若年進出が進んでいる競技を、5つの評価項目で比較する構造。
- キーメッセージは、海外拠点が競技力、競技環境はとは別に、競技者ピークの若年化が加速しており、速い時期に海外に行く必要がある競技もある。
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18 |
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比較
- 「選手として確立されてから海外に拠点を置く競技(青)」を、5つの評価項目で比較する構造。
- キーメッセージは、日本でも競技力、競技環境は整備されている。
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19 |
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並列
- 「若年層から海外に拠点を置く競技(赤)」の事例を幾つか紹介する並列の構造。
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20 |
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比較
- 複数の競技を、競技環境の4つの項目で比較する構造。
- キーメッセージは、野球は若年期海外進出適性は、低い競技である。
- 結論としては、分りやすい。しかし、途中(17ページ、19ページ)の必要性に疑問がある。もしかして、大谷選手が、ドイツブンデスリーガーに行った選手や、卓球の水谷選手、岸川選手、福原選手、そして松下選手との交流がありその影響を案じての資料かもしれない。
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21 |
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並列
- 日本でどのような能力を付けることが海外で活躍するためには必要かの要素を並列で示す構造。
- ここからは、先ず日本でどの様な力をつけると良いかを示すもの。
- キーメッセージは、2点。1点目は、国内で確実な力を付ける。2点目は、日本スタイル(自分の自分達のスタイル)で勝負する。
- 野球とサッカーを同列で扱うこと、野球に日本スタイルが有るのかは、疑問がある。これは分析者の野球に対する知見の無さからそう感じるのかもしれない。
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22 |
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並列、配置
- 「国内で確実な力を付ける」の要素を並列で示す構造。
- 及び、その要素を習得するタイミングを全体の中における配置として示す構造。
- キーメッセージは、「国内で確実な力を付ける」の要素あ2点。1点目は、競技技術の確立。2点目は、人としての自立。
- そしてそれらは、高卒後のこれから身に着けて行く時期であること。
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23 |
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並列
- 「日本スタイルで勝負する」の要素を並列で示す構造。
- 戦うために必要な要素を列挙し、世界と比べて劣っているところもある。自分のスタイルを身に着け、世界に通用する戦い方を創る必要性を解く。
- キーメッセージは、先ずは自分の戦い方のスタイルを身に着けること。そのためには、競技環境の整った日本が良い。
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24 |
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並列
- 今までの論拠から結論を列挙する並列の構造。
- キーメッセージは、直ぐに渡米するより、NPB(日本ハム)で力を付ける方が、今までの論拠から考えて賢明である。
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25 |
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比較
- NPBとMLBを比較案として、大谷選手の希望を比較項目にして、比較する構造。
- キーメッセージは、今一度、大谷選手の希望を実現するには、どちらが有効か、冷静に考えてほしい。
- そして、日本ハムは、それを支援する選手育成体制を用意しています。
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※上記の構造と解説は、ストラクチャードコミュニケーション協会の独自の分析により行ったもので、北海道日本ハムファイターズの作成意図とは全く関係ありません。
また、本資料(全25ページ)で使われている構造のページ数を以下に示します。
情報の基本構造 |
ページ数 |
解説 |
並列 |
並列 |
12 |
全体の52%(構造を示した23ページを母数)で使用されている。一般的にも、最も多く使用される構造。 |
配置 |
4 |
全体の17%。比較的多く使用されている。4ページの使い方は効果的。 |
階層 |
階層 |
1 |
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段階 |
0 |
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集合 |
交差 |
0 |
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包含 |
0 |
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比較 |
比較 |
8 |
全体の34%。比較的多く使用されている。本資料が、国内と海外を比較し、遜色ない又は国内の方が良いことを示す資料であることから、比較が多用されている。全体を通じて、効果的に使用されている。 |
対比 |
1 |
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関 |
順列 |
0 |
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関係 |
0 |
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